アフターコロナ に向けて、「長期不況」へ備える 広告業界 | DIGIDAY

編集部 2020/3/24

広告主らは、コロナウイルスの急速な感染拡大による最初のショックを乗り越えつつある。
がその後には、不況というさらなる困難が待ち受けているようだ。

3月第1週にはそれまでの倍に近い、おびただしい数の広告主のイベントやローンチが延期され、移動も制限された。
広告主のあいだでは当初、コロナウイルスの経済への大きな影響は短期的との見方が多かったが、いまや各社は今後何カ月も続くであろう影響に備えている。
3月第1週、世界中の株式市場で不況の予兆が見られた。
投資家はコロナウイルスによる経済成長への悪影響を悲観し、ダウやS&P、ナスダック、FTSE 100の上場企業の株価は連日、急激な下落に見舞われた。
大半の広告主役員が、コロナウイルスのパンデミックによって通常業務への復帰の見通しが立たない状況にあると語っている。

ある役員は、メディアの請求額が合計20億ドル(約2200億円)相当の新規ピッチ3件が、コロナウイルスの状況が安定するまで延期されたと明かす。
この結果、エージェンシーに入るメディア資金もかつてないほど不透明な状況にあるという。

パンデミックによる最終的な経済的影響を予測するのは時期尚早だが、欧州IABのダニエル・クナップ氏は2008年の不況に匹敵しうると警告している。
当時の不況は財政システムが原因だったが、コロナウイルスは多数の業界で消費者需要の落ち込みを引き起こしており、世界中で経済活動が冷え込んでいる。

あるデジタルエージェンシーのCEOは、匿名を条件に次のように語った。
「クライアントのなかには、販売できる在庫がないため4月に請求ができないかをエージェンシーに尋ねているところもある。
こういった動きが広がれば、当社の事業にもドミノ効果による影響は避けられないだろう」。

広告・メディア業界にも暗い影

コロナウイルスのパンデミックによる経済への悪影響は、広告およびメディア業界にも暗い影を落としつつある。

IDコムズ(ID Comms)のCEO、デイビッド・インドゥ氏は「市場は過去にない状況に直面している。
多数の広告主が主要事業や商業的な条件を守るため、集中すべき分野を慎重に選択している」と語る。
「状況がはっきりするまで営業計画の多くが凍結中だ。
下半期から来年の頭には大量に見直しが行われる可能性がある」。

アディダス(Adidas)やアンハイザー・ブッシュ・インベブ(AB InBev)など一部の広告主は、コロナウイルスによる販売能力の低下を受けて、すでに中国など一部市場で広告資金の引き上げを行っている。
一方、本記事の執筆にあたってインタビューを行ったエージェンシー役員らによれば、ストリーミングサービス企業などは、自宅に滞在せざるを得ない人たちから収益を上げるため、広告の購入数を慎重に増やしているという。

購入できるメディアがない

アディダスのCEO、カスパー・ローステッド氏は3月第1週に行われた業績報告のなかでアナリストらに対し、「過去4週間、中国でマーケティングに投資する意味はなかった。
すべて閉鎖されていたからだ」と述べている。

その一方で、同社は意味のあるところではメディアの購入を継続していくとも語っている。
だが問題は、パンデミックにより主要スポーツのイベントがほとんど開催されなくなる可能性があることだ。
スポーツウェア企業にとっては、広告資金を投入できるところも少なくなるおそれがある。

ローステッド氏は「たとえばイベントをキャンセルした場合、当然ながら関連のマーケティング費用はかからなくなる」とアナリストに語っている。

パフォーマンス系に大打撃

イベントのキャンセルや移動制限により、旅行者も減っている。
旅行者が減れば、旅行会社にとっても広告支出に対するリターンといったビジネス上の指標は大幅に悪化する。

独立系エージェンシーネットワークのティピグループ(TiPi Group)でマネージングディレクターを務めるギャレス・オーウェン氏は「旅行業界など、一部業界では広告を含め、極力支出をカットしようと努めている」と語る。

同社の旅行会社のクライアントは、通常であれば売り上げを伸ばす一部のキーワード広告について購入を見送っているようだ。
PPC(pay-per-click)マーケティングを広範囲に渡って切りつめるとともに、ディスプレイ広告やブランドに関連しないコンテンツへの支出も停止しているという。

M&Cサーチパフォーマンス(M&C Saatchi Performance)のグローバルCEO、クリスチャン・グラッドウェル氏はこれについて次のように述べている。
「ウイルスによってパフォーマンスマーケティング予算は悪影響を受けている。
ファネルの初期段階において、メディア獲得のためのアクションあたりのコスト範囲が狭まっている」。

インフルエンサーにも影響が

旅行会社やイベント組織が受けている打撃は、広告業界全体に急速に広まりつつある。

たとえば一部のインフルエンサーは、移動制限やイベントのキャンセルによって、広告主との魅力的なプロジェクトが延期や中止されるといった影響を受けている。

インフルエンサータレントエージェンシーのバイラル・タレント(Viral Talent)の共同創業者、ローラ・エドワーズ氏は次のように述べている。
「最新映画の宣伝に参加するクリエイターと海外にいく直前で、ひとつのイベントが中止に、もうひとつが延期になった」。

いずれにせよ、これまでパンデミックによって影響を受けた旅行やツアーキャンペンは少ないという。
だが、もし状況が悪化し、各社が予定しているブランドがスポンサーしているキャンペーンを中止すれば、インフルエンサーの収益にも「深刻な」影響が出るだろうとエドワーズ氏は予測している。

動画制作企業の苦肉の策

キャンペーンの予期せぬ中止やメディアのスケジュール延期リスクは、制作企業の役員にとっていつだって冷や汗ものの事態だ。
映画撮影も、パンデミックによってさまざまな制作段階で中断されている。
クリエイティブエージェンシーのフォールド7(Fold7)でテレビ担当リーダーを務めるミッシェル・ヒッキー氏によれば、撮影まで3週間という段階でチームが解散になったケースもあるという。

ヒッキー氏は、「当社では現在、保険契約における『不可抗力』の項目にパンデミックが当たるかが、重要な検討事項になっている。
当てはまる場合は支払いが行われないからだ」と語っている。

制作を続行するひとつの方法が、制作におけるライブ配信だ。

ヒッキー氏は、3月第3週後半に欧州で行われた撮影から帰国できなかった撮影クルーもいたが、ライブ配信で指示を行うことで撮影を続行できたという。
今後の制作において、ヒッキー氏は移動を抑えるためロンドンで撮影することや、過去のコンテンツの再利用、撮影管理を必要としないアニメへの投資を考えているという。

現況における広告主の機会

このように厳しい状況にありながらも、広告主らにとってのチャンスも存在している。

一部のキーワードではCPCが非常に低くなっているなかで、コロナウイルスに関する用語を利用して自社サイトへのトラフィックを回復しようとしている企業も存在する。
ティピグループのオーウェン氏は、国外への移動が制限される前に、複数の西ヨーロッパの旅行保険会社がこういった動きに出たことを明かしている。

Seb Joseph(原文 / 訳:SI Japan)

情報源: アフターコロナ に向けて、「長期不況」へ備える 広告業界 | DIGIDAY[日本版]

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