飲食店の収益は、「FLコストで60%前後が適正」

飲食店の収益は、「FLコストで60%前後が適正」と言われています。
このFLコストというのは、

F=食材原価
L=人件費

です。
これをそれぞれ30%前後程度に抑えるようにするのがセオリーです。

分かりやすいように、東京都心部における客席数30席、客単価3000円くらいで、そこそこお客さんの入っている架空の居酒屋を例として考えてみましょう。

飲食店の売り上げは、

月売り上げ=客数×客単価×営業日数
で表されます。
そして、かかるコストは、食材原価・人件費・家賃を筆頭に、光熱費や広告費(食べログなど媒体の掲載費用など)、雑費などがあります。
ざっくりとしたシミュレーションは以下の表をご覧ください。

飲食店における基本構造シミュレーション
上記以外にもいろいろなコストがかかってきますので、実際の営業利益はもう少し下がります。
一般的に営業利益で5~7%前後です。
飲食店の上場企業でも3~4%あたりが中央値になります。
こうして見ればものすごく利益率の低い業界であることはご理解いただけるかと思います。

…1カ月休業しただけで5カ月分の利益が消える

今回の緊急事態宣言によって、多くの商業施設が2020年5月6日まで休業を発表しました。
そして、東京都では飲食店営業は原則20時までとなりました。
これを機に、5月6日まで営業を中止するというお店はかなり多くなりました。
仮に、先ほどのお店で1カ月の売り上げが完全に止まった場合は以下のようになります。

1カ月の売り上げが完全に止まった場合

たった一月で5カ月分近くの営業利益が無くなりました。
【 1カ月の原価=5カ月分の営業利益 】

…もし、1カ月の売り上げが半減したら?

それでは、コロナウイルスはどのような影響を数字上でもたらすのでしょうか。
先ほどの架空の飲食店の売り上げが半減した場合をシミュレーションしてみます。


売り上げが半減した場合のシミュレーション

平時に得られる営業利益約2カ月分の赤字になりました。

店舗を回す人は最低限置かねばなりませんし、社員の人件費は削れません。
アルバイトを削ったとしても、抑えられる人件費には限度があります。
そして、家賃は基本的にどんなに売り上げが下がっても変わりません。
今、コロナの影響で大家さんとの交渉も増えていますが、大家さん側にも懐事情がありますから、容易なことではありません。

売り上げが半分になると、このお店の場合は2カ月分の営業利益が吹っ飛びます。
つまりこのお店の場合、4カ月の間売り上げが半減すると、その後の8カ月間は通常の売り上げに戻ったとしても、その1年間の営業利益はほぼゼロになります。
固定費が厚く、利益が薄い飲食店の厳しい現実です。

…今回の危機をデリバリーやテイクアウトなどで乗り切ればいい、という声もあります。
もちろん、やらないよりはやったほうがマシでしょう。

しかし、そもそもデリバリーだけで落ちた分の収益が賄えるくらいであれば、最初からやっています。
根本的にデリバリーをやるのに向いた立地やキッチンでない場合も多いですし、慌てて参入する店舗が増えすぎている現状では、いまさら始めたところでほとんどのお店にとっては焼け石に水です。

デリバリー費用も、例えばUber Eats(ウーバーイーツ)だと35%の手数料が取られます。
そこから包材費用もかかりますし、基本的にデリバリーは実店舗以上に薄利になりがちです。

高級店のデリバリーやお持ち帰り弁当なども増えていますが、これも一時的な応援・ご祝儀的需要であり、持続性がないと考えています。
実店舗の価値の本質はサービスや店の場も含めた総合的な体験にあり、それはデリバリーなどで真価を発揮できるものではありません。

「1カ月休業で5カ月の利益が消える」一目で分かる飲食店の収益構造 なぜコロナ禍は飲食店を殺すのか

情報源: 「1カ月休業で5カ月の利益が消える」一目で分かる飲食店の収益構造 なぜコロナ禍は飲食店を殺すのか (2/5)

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