大学10兆円ファンド、支援は25年間|nikkei.com

2022年8月31日 14:40

世界トップの研究力を目指す大学を運用益で支援する10兆円規模の「大学ファンド」制度が固まった。
文部科学省が31日、支援期間を最長25年とする基本方針案をまとめた。
異例の長期支援によって対象校の事業規模を倍増させ、国際競争力の強化と技術革新の創出を図る。
成果の検証方法が課題になる。

基本方針は、5月に成立した関連法に基づき策定される10兆円ファンドの大学支援の設計図となる。
31日の文科省有識者会議で案が大筋了承された。

世界トップレベルへ成長できる国内大学を「国際卓越研究大」と認定し、ファンドの運用益で支援する。
運用益の目標は年3000億円で、仮に5校に分配すれば1校当たり600億円。
2021年度の国立大学運営費交付金でみると、全国2位の京都大(573億円)を上回る規模だ。
認定校は人材獲得や研究環境整備に向けた財政基盤が強化される。

認定校には研究力強化に向けた計画作成を義務付ける。
ファンドからの支援を含めた認定校の年間総支出額を「事業規模」とみなし、年平均3%程度の増加を求める。
想定通りに支出が増えていけば、認定校の事業規模は25年後に2倍になる計算だ。

文科省による個別大学への支援期間は5~10年が多い。
国際化を支援する「スーパーグローバル大学」事業は14~23年度の10年。
独自研究に取り組む私立大を助成する「私立大学研究ブランディング事業」は最長5年の予定で、同事業に絡む汚職事件を受け打ち切られた。

異例の長期支援に乗り出す狙いは海外トップ大との差を縮めることだ。
米国のスタンフォード大やハーバード大は年間収入が5000億円を超える一方、日本はトップの東京大で1800億円にとどまる。
収入の差は教育・研究基盤への投資の差に表れる。

大学関係者によると、優秀な研究者の獲得競争では報酬や研究設備面で海外大に及ばず、競り負けるケースが目立つ。
若手研究者の育成や新たな研究分野の開拓といった取り組みに投資できる財源も海外有力大と比べ少ないという。

方針案では選考の判断基準として、論文の総数や引用数上位に入る割合、外部からの研究資金の受け入れ目標などを示した。
文科省は年内に公募を開始。
23年度に最初の認定校を決め、24年度から支援を始める。

認定をにらんだ動きも出ている。
東京工業大と東京医科歯科大は8月、統合に向け協議を始めた。
選考過程で、医療系と理工系を融合させる「医工連携」によって研究力の強化をアピールする狙いがあるとみられる。

課題は巨額支援に見合う成果の検証だ。
方針案は「短期的な成果主義に流されない」と強調。
6~10年ごとに認定校の事業成長のほか、人材育成や研究実績の状況について評価し、支援継続の可否を判断するとした。
ただ具体的な審査の体制は固まっていない。

有識者会議委員からも「25年は長く、大学の計画も漠然としたものになりかねない」との懸念が示されている。
費用対効果を高めるためにも、認定を目指す大学に具体的な事業計画の作成を求め、第三者が進捗を厳格にチェックする仕組みが求められる。

▼大学「10兆円ファンド」 国内トップクラスの大学を支援するため、財政投融資を主な財源とした大学ファンドを科学技術振興機構(JST)に設けた。
成長分野での技術革新を強化する狙いで2020年12月の追加経済対策に盛り込まれた。
22年5月成立の「国際卓越研究大学法」は、目的について「大学の国際競争力の強化及びイノベーションの創出の促進には大学の研究体制強化が必要」と定める。
卓越大学への助成のほか、将来的には運用益を国内の博士課程の学生の支援にも充てる計画だ。

情報源: 大学10兆円ファンド、支援は異例25年間 事業規模倍増へ: 日本経済新聞

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