2016年12月26日 14:37
前年比約5,000倍となる20億円を超える寄付金額
佐賀県の北東部に位置する上峰町。
この小さな町に、大きな波紋が広がっている。
事の発端は、驚異的な寄付金額の増加。
いわゆるふるさと納税による寄付金額が、2014年度の約40万円に対し、15年度は20億6,178万円と大きく上伸。
件数も14年度の3件から、15年度は9万1,531件となったのだ。これには、データ分析と入念なリサーチを駆使した同町の営業戦略が功を奏している。
返礼品は11品目から60品目に拡大。
民間のポータルサイトに登録し、知名度を高めた。
同町では生産者から提供された写真をそのまま使うのではなく、見栄えの良いようにプロのカメラマンに依頼するなど、民間業者とタッグを組み手法を変えた。
各々の返礼品は写真とキャプションを詳しく表記し、見栄えとわかりやすさを追求。
たとえば、佐賀牛の産地という後ろ盾と、「返礼品は牛肉が人気」という情報をもとに重点的なPRを行ってきたことが、現在の金額に反映している。
16年11月末現在、寄付金額20億2,743万円、件数は12万3,764件であり、16年度においても大きく伸びることは確実である。好調なふるさと納税特需を受けて、一般会計予算は2015年度の37億1,663万円から、16年度は85億807万円と大幅にアップした。
ところが議会で、町の財政改善を理由に議員への費用弁償(議員が議会に出席する際の交通費など)支給を再開させる議案を漆原悦子議員が提出したことで問題が噴出。
この問題を受けて地元の人々は「ふるさと納税が増えたからといって議員への支給を行うのはどうなのか」
「議員が寄付金を増加させたわけでなく、むしろ町職員が寄付金を増加させたので(職員を)評価すべき」、
また、SNSでも「こういうことなら返還してほしい」という意見が出ている。
思わぬ事態に、上峰町議会は16日、事前協議がなかったとして、漆原悦子議員が提出した費用弁償支給再開議案の撤回を表明した。上峰町はとくに大きな基幹産業があるわけでなく、昔から畜産や農業を主力とする町である。
その地域の特性を逆手にとった涙ぐましい手法で大きな財源を確保できた。
しかし、何を勘違いしたのか、議員は何の努力もせず、この臨時財源に群がるとも言える行動に出た。
報道によりネットなどで炎上した今回の件は、寄付を行った人々や同職員に対しても浅ましい行為ではなかっただろうか。【道山 憲一】